ケロケロぴーの未知標パート2

家主ケロケロぴーの思い出し思い出しの日記です。

カメの名は……

 叔母から電話がありました。「温かい話、ありがとうね」という言葉。私は、所属する童話の会の文集を叔母に送りました。文集に載せた作品の一つは叔母のつれあいであるおじとおじのカメを書いた話でした。
 おじはもう手の施しようのない状態で、穏やかに自宅で療養していました。「来年はもう、この風景を見れないだろうな」庭の木に巣を作る鳥達の様子を見て、おじはつぶやいていました。そのおじが、冬眠する一匹のカメを大切にしていました。奇跡的に生き返ったカメ。そのカメの命に自分の命を重ねていました。3月初め、春の兆しが少しずつ感じられるようになった頃。家に帰ると、私はおじとそのカメの話を書きました。
 それから半年、おじは亡くなりました。私は、あまりにもそのままのことを書いた話をおじに見せることなく、そして、カメの名前をどうしようかと迷ったのに、名前をきくこともなく……。
「そんな話、きいていたんだね」
 カメの話を私が聞いていたことに叔母は驚いていました。話は、実話そのままでしたから。
「文集、仏壇にあげといたよ」
 もう少し、いい話が書ければ、見せる見せないで悩まなかったのに。
「叔母さん、あのカメ、なんて名前だった?」
 私は初めてカメの名を知りました。
(このカメの話は「続きを読む」にあります)
『春が来た』
 カメの三太(さんた)は、起きるのがこわくて、ずっと土の中にもぐっていました。冬なので、カメは寝ていてもいいのですが、三太は家の中で飼われていたので、冬眠しなくてもいいのです。
 三太を飼っているパパさんは病気でした。目が覚めた時に、パパさんがいなかったら……と思うと、三太は土の中から出ることができなくなっていたのです。
 パパさんはたくさんのカメを飼っていました。パパさんが家にいると、カメたちは、パパさんの後ろをぞろぞろぞろとついて歩いていました。まだまだ小さい三太は、いつもがんばってかしゃかしゃ手足を動かしていましたが一番後ろでした。でも、パパさんは、
「お前はいつもいっしょうけんめいだな」
と、手にとって、やさしく頭をなでてくれるのでした。
 ある日、三太が仲間の大きなカメに押されて水の中でおぼれてしまうことがありました。その時、死にそうになった三太を助けてくれたのは、パパさんでした。パパさんは、動かなくなった三太に息を吹き込んで、胸の辺りを何度も押してマッサージをしてくれました。げぼげぼっと水をはき、三太は目をさまし、息をふきかえしたのでした。
(なのに、ボクは何もできない……)
 三太は、入院を繰り返しているパパさんの姿を見ていることしかできないのがくやしくてくやしくてたまりませんでした。
 冬の初め、パパさんが三太だけを家のすみに置いてあるビニールケースに入れました。そして、そっと土をかぶせてくれました。
「必ず、春に会おうな」
 そうパパさんに言われたのに、土の中で、起きようかこのまま寝ていようかと、毎日迷っていました。そうして、静かな毎日が過ぎて行きました。日が部屋の奥にだんだん差し込んできて、暖かい日も続くようになりました。もう、春は近くです。
 三太は、雨の降った午後、顔だけ土の外に出してみようかと思いました。
(顔だけ……ううん、やっぱり怖いから、目だけ……)
 ほんのちょっと、顔を土から出してみました。目をきょろきょろっと動かして、周りを見てみました。
「おお、三太、やっと起きたか」
 三太の目の前に、パパさんの笑顔がありました。
「ああよかった。今年はなかなか起きてこないから、もう、目を覚まさないのかと心配してしまったよ」
 パパさんの言葉を聞いて、三太はもっと早く起きればよかったと思いました。
「お前は一度死にかかっても、ちゃんと生きている。俺もお前を見習わなきゃな」
 パパさんの深くなったしわを見て、三太は体をぶるんとゆすりました。
(ボクは何もできないけれど)
 三太は、急におなかがすいてきました。
(パパさんの笑顔を毎日見ていたい)
 三太は、くいっと首を伸ばして、パパさんの顔に近づけました。

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